2023-06

読書

ラッシュライフ 伊坂幸太郎

泥棒を生業とする男は新たなカモを物色する。父に自殺された青年は神に憧れる。女性カウンセラーは不倫相手との再婚を企む。職を失い家族に見捨てられた男は野良犬を拾う。幕間には歩くバラバラ死体登場――。並走する四つの物語、交錯する十以上の人生、その果てに待つ意外な未来。不思議な人物、機知に富む会話、先の読めない展開。巧緻な騙し絵のごとき現代の寓話の幕が、今あがる。
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瞳の中の幸福 小手鞠るい

いままでは、少しだけさびしかった。でも今は、幸せの意味を知ってる。 金色の目をした小さな「幸福」が教えてくれたこととは――。 東京でカタログ雑誌の副編集長をしている、妃斗美(ひとみ)。 長く付き合ってきた恋人から婚約を破棄された過去を持つ彼女は、 その後、35歳になるまで他の人とは恋愛せずに生きてきた。 「姉貴もそろそろ結婚しないと、薹(とう)が立ってくるぞ」 実家で弟に心ない言葉をかけられ、 やりきれない思いをかかえながら東京に戻ってきた妃斗美の目に留まったのは、 不動産屋の「お買い得な一軒家有り」という貼り紙だった。 「家さえあれば、ひとりでも」 突然、そんな思いにとりつかれた妃斗美は、理想の家を手に入れるために動きはじめる。 保証人問題など波乱のすえ、やっとのことで家を手に入れた途端、 天から降ってくるように訪れたのは、最高のパートナー、猫との出会いだった。 猫は、彼女に何を与え、何を奪っていったのか。 幸せの意味を問い直す、傑作書き下ろし長編。
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道づれの猫 唯川恵

ふり返れば、いつもかたわらに猫がいた。離婚して傷ついた時、肉親を亡くした時、家庭のある男を愛した時、人生の様々な場面で猫に救われてきた女性たちの心洗われる七つの物語。帰省するのはいつぶりだろう。大学進学を機に上京して十四年、忙しさにかまけて実家から足が遠のいていた私は、新幹線で金沢に向かっていた。まもなく旅立つであろうミャアを見送るために──。(「ミャアの通り道」)
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そのバケツでは水がくめない 飛鳥井千砂

アパレルメーカー「ビータイド」に勤める佐和理世は、自らが提案した企画が採用され、新ブランド「スウ・サ・フォン」の立ち上げメンバーに選ばれた。そんなある日、カフェに展示されていたバッグのデザインに衝撃を受けた理世は、その作者・小鳥遊美名をメインデザイナーにスカウトする。色白で華奢、独特の雰囲気を纏う美名の魅力とその才能に激しく惹かれる理世。社内でのセクハラ事件をきっかけに二人の距離は一気に縮まるが、やがてその親密さは過剰になっていく.